2016/02/01 作成
1956(昭和31)年に発生が確認された水俣病は、環境汚染の食物連鎖で起きた人類史上最初の病気と言われています。その教訓を生かそうと水俣病患者、そしてその支援者によって始められた柑橘栽培。今年も津奈木甘夏生産者の会から一足早く届く春の便りが届けられました
太陽と雨、土の恵みを受けて育った春みかんのセットです。春みかん食べながら、食と環境について考えてみてはいかがでしょうか

熊本・津奈木甘夏生産者の会は、1980年代に水俣病患者とその問題に関心を持つ人々の勉強会の中から生まれました
津奈木甘夏生産者の会のある津奈木町は熊本県水俣市の北隣にあります。水銀汚染の食物連鎖で起きた水俣病の元凶である工場排水の被害を受けた地域です。60年代、水俣病によって近海漁業が営めなくなった住民たちは、日照に恵まれ水はけの良い斜面を活かした柑橘栽培で生計を立てるようになったのです。しかし、当時は現在よりも無防備に農薬が使用されていました。そのため農薬による健康被害に苦しんだ生産者も多くいました

農薬は環境を壊してしまう
70年代に水俣病患者、支援者が中心になって始めた医療勉強会で、農薬が化学兵器にもなる猛毒で環境も壊してしまうことを知りました。自らの体験もふまえ、「農薬を使うことは環境への加害者となってしまう」「自ら加害者になりたくない」との思いから、農薬や化学肥料に頼らない柑橘栽培に取り組んでいます
そして、1997(平成9)年には自分たちの育てた柑橘の流通と販売を行う組織“グリーンネット結”も設立しました

水俣病はまだ終わっていない
津奈木甘夏生産者の会は生産者団体としての発足から30年が過ぎました。圃場は10か所、約300アールあり、そのほとんどの園地で有機認証を取得しています
現在は生産者の姉妹兄弟、子供や孫が仕事の合間に手伝うなどで、農作業をまかなっています。しかし、生産者の高齢化と後継者不足は深刻です
また、2016(平成28)年、水俣病は公式確認から60年を迎えます。しかし、水俣病事件は解決に向かうどころか、被害の全容解明も進まず、被害の深刻さは益々深まっています。現在も水俣病第二世代訴訟が続いています。原告は海の水銀汚染が最もひどかった60年前後に生まれ、胎児や子どものときにその影響を受けました。津奈木甘夏生産者の会の生産者も原告に加わり、問題を過去のものとしないよう、今も活動を続けています

自分たちの健康は自分たちで守る
津奈木甘夏生産者の会の谷洋一さんからのメッセージです
「1975(昭和50)年「自分たちの健康は自分たちで守ろう」と水俣病患者と共に医学の勉強を始め、その中で農薬は実は科学兵器にもなる猛毒であることを学んだことから有機栽培にとりくむきっかけになりました。そして、40年の経過の中で少々悪天候や病虫害には負けない土壌と木のみかん園になりました。そんなみかん園と見かけが悪くても食べてくださる会員の皆様に支えられて、生産ができています。皆様の有機とか食とかへの関心に感謝すると共にこれからも皆様と連繁の中で生産を続けたいと思います。どうぞよろしくお願いします」

【春みかんセット】 5kg
生産者:津奈木甘夏生産者の会(熊本)
一足早く届いた春の便り。太陽と雨、土の恵みを受けて育った春みかんのセットです
水俣病の被害者が、農薬の恐ろしさを学んだ結果、農薬や化学肥料に頼らない方法で育てました。どうぞお試しください
セット内容
はっさく(約800g)……程良い甘さと酸味、かすかな苦味が美味しい
伊予柑(約1kg)……果皮がむきやすく、甘みと酸味のバランスが良好
ポンカン(約1kg)……酸味は少なめ。甘み・コクがあって食べやすい
スイートスプリング(約1.2kg)……上品な香りで爽やかな甘みが特長の人気種
不知火(約1kg)……果皮はむきやすく、種も少なく、濃厚な味わい

今期の作柄
天候はあまり恵まれた年ではありませんでした。台風や日照不足、最近は大雪もありました
「昨年はかっと照りつける強い日差しが少なく、かと言って雨が降るでもなく、中途半端なくもりの日が多くて野菜や果物にはあまりよい条件ではありませんでした。8月25日未明には台風15号が不知火海を直撃し記録的な強風に見舞われました
みかん園では落果はもちろん、大きな枝が飛んだり,根から浮き上がって倒れた木も各園で見られました。そろそろ採果しようという頃になってカラス、ヒヨドリ、いのしし、たぬきなどの食害が例年よりひどいのも山の中の荒れ方がひどいためと思います。そんな動物と競争しながら採果しています」(谷洋一)
グリーンネット結は津奈木甘夏生産者の会が自ら育てた柑橘の流通と販売を行うために立ち上げた組織です。みかんの出荷事務、マーマレードの加工、新たにあおさの佃煮の加工などを行っています
しかし、高齢化など厳しい問題に直面しています

【手づくり甘夏マーマレード】 100g
生産者:グリーンネット結(熊本)
自家園の甘夏と洗糖だけを使って仕上げました。添加物も水も加えず、甘夏が持つペクチンと糖分を加熱することでゼリー状に。果物を砂糖で煮たジャムとは一味違います。パンにはもちろんヨーグルトやお菓子にもどうぞ

「私たちの会の生産者4人のうち3人は70代で、高齢化は厳しいものがあります。そのため日々の栽培管理と枯死した木を片付けて、傍らに苗木を植える、といった現状維持が精一杯、というのが正直なところです
日ごろ遠くで働いている家族が休みを利用して帰り伸びすぎた防風林を伐ったり、肥料を撒いたり、といった力のいる仕事をして、そんな家族や生産者互いの協力で成り立っています」
(谷洋一)

ネローラ花香房の商品は、津奈木甘夏生産者の会の全面協力により製造されています
創業者の森田恵子さんが、熊本では水俣病被害者によって農薬や化学肥料に頼らない有機柑橘の栽培が長年続けられていることを知ったことがきっかけです。水俣病の教訓にもとづき有機栽培された甘夏の花を使い、日本初のネロリスキンケア製品の開発・販売することで、その教訓を広く伝えたいと考えています

【ネロリジェイウォーター】 80ml
生産者:ネローラ花香房(熊本)
津奈木甘夏生産者の会の有機甘夏みかんの花の蒸留水を使った保湿ローションです。甘夏の花を蒸留したフラワーウォーターに、保湿成分と、石垣島のしまきびから作った保存成分をプラス。乾燥、肌荒れ、年齢とともに変化していく肌に、ハリと潤いをあたえます。また、甘夏の香りや成分にはストレス軽減やリラックス効果のほか、抗酸化作用や抗菌作用が期待されています

【ネロリジェイフローラルオイル】 15ml
生産者:ネローラ花香房(熊本)
津奈木甘夏生産者の会の有機甘夏みかんの花の蒸留水を使ったエッセンシャルオイルです。甘夏みかんの花から抽出したネロリエキスをオーガニックホホバオイルに浸漬し、オイルを抽出しました。ネロリ成分とゴールデンホホバとの相乗効果で、潤い力とアンチエイジング効果を発揮。肌にスッとなじみ、肌を内側から甦らせます。鎮静効果もあわせもつ甘夏ネロリの自然の香りで、心身ともにリラックスできます